各種催事

パッケージデザイン懇話会

2023年度 開催予定

例 会 第163回
講演会
第164回
講演会
第165回
講演会
第166回
講演会
日 程

時 間
5月26日
(金)
15:00~17:30
8月25日
(金)
15:00~17:30
11月28日
(火)
15:00~17:30
2024年
2月28日
(水)
15:00~17:30

5/26 第163回懇話会は、日本パッケージデザイン協会理事長で(株)プラグ社長の小川亮氏を講師にお招きし、新理事長の抱負とAIとデザイン思考で変わるパッケージデザインについてご講演いただく予定です。

※今年度は包装技術協会会議室での実施を前提に、ハイブリッド開催の可能性を含め検討しております。

※交流懇親会の開催方法につきましては懇話会ニュースでお知らせいたします。

※日程及び時間は変更する場合があります。

2022年度 実績

第159回 講演会
2022年 5月20日(金) 15:00~17:00

ZoomによるWeb講演

阿部 岳 氏

テーマ:農業のブランドデザインとパッケージデザイン

講師:阿部 岳 氏
(株)ファームステッド
代表取締役・アートディレクター

参加者数:32名

講演概要:

 北海道帯広市出身で、東京でデザイナーのキャリアをスタートさせた阿部岳氏。同じ帯広出身でプロデューサーの長岡淳一氏と共同代表を務める株式会社ファームステッド(本社・帯広市)を2013年に設立。日本各地の農業をはじめとする一次産業においては、都会ではなく地方にこそデザインが必要という考えで、「農と食と地域をデザインする」をミッションに活動しています。今回の講演では、大きな転換期にある日本の農業で新しいかたちや、6次産業化での農家による加工・販売、農場のブランド化、的確なパッケージデザイン、マス流通とは違った工夫などが多くの事例で紹介されました。

6次産業化で農業にブランドが必要になる

 生産者の高齢化、農業人口の減少や耕作放棄地の問題は、国土保全という点でも課題です。国が推進する6次産業化は、1次産業の農林漁業と、2次産業の製造、3次産業の小売を掛け合わせて、新たな価値を生み出す取組として注目されています。農家による加工品が各地で販売されているものの、「商品の売り(価値・魅力)が何かわからない」「作り手の情報がない(ブランドがない)」といったコミュニケーション上の課題も。商品に適した的確なデザイン、ブランド構築が求められています。

農業のブランドデザイン、旗印、FI(ファーム・アイデンティティ)

 食材やパッケージされた食品を購入する時、人は食べる前にお金を払います。メディアや店頭、パッケージなどから視覚に飛び込むさまざまな情報(食感、産地、価格、見た目、安全など)に納得して対価を払っています。その情報をどうデザインするか?阿部氏は企業のCI戦略を農業に適用したFI(ファーム・アイデンティティ)を提唱しています。戦国時代の武士の旗印を例に、自分とは何者か、誇りとするもの、価値は何かを考え、シンボル化する、いわば現代の家紋、旗印として可視化します。

 FIは、コミュニケーションだけではなく、農家自身のモチベーションを高める効果も大きく、前向きな気持ちを呼び起こして勇気を与える、経済的指標では測れないデザインの力が働くといいます。「デザインがその手伝いをできる」ことが阿部氏自身の活動の原動力にもなっているそうです。

講演概要 講演概要

価値に見合った商品、パッケージ

 一つの事例、福島の果物農家では、巨峰の枝付干しぶどうを透明パウチとラベルのパッケージに入れ、道の駅で販売していましたが売れませんでした。手間がかかり、生産量も限られているため高価格になる商品のその価値を感じてくれる人に向けて、価値に見合ったパッケージの贈答品にしました。意欲ある農場主の「海外進出も」との意向も踏まえ、アルファベット表記のシンボルを開発、大量生産品とは一線を画す発信(農場主はソムリエ姿で展示会に臨んだとか)により、ホテルや商社、マスコミにも注目され、高級贈答品としての地位を得ました。

講演概要

シンボルマークからパッケージデザイン、統一デザインによるブランド構築

 自ら誇りにするものは何かを考え、アイデンティティとなるシンボルマークが商品やモノに表現されていると、さらに自信になる、と阿部氏は語ります。作り手のモチベーションを高めるとともに、デザインを統一することで買い手とのコミュニケーションを強くするブランド構築につながります。

 講演の最後には、6次産業化のパッケージデザインで大事なこととして、「自分たちの強みの再認識」「自分たちの弱みの再認識」「誰に、いくらで、どこで売るか」「商品よりも自分ブランドを売れ」「コストをかけず、投資をかける」をあげ、講演を締めくくりました。その後の質疑応答でも活発な意見交換がなされ、充実した2時間となりました。

(大日本印刷(株) 中越 出)

第160回
2022年 8月26日(金) 15:00~17:00
ZoomによるWeb講演
長澤 君枝 氏

テーマ:Calbeeの「伝わるパッケージデザイン」の考え方

講師:長澤 君枝 氏
カルビー(株)
CXコミュニケーションチーム

参加者数:47名

講演概要:

 ライオン(株)を経て、2012年よりカルビー(株)にてインハウスデザイナーとして活躍されている長澤氏より、『Calbeeの「伝わるパッケージデザイン」の考え方』というテーマで講演いただきました。長澤氏は、カルビーでデザイン制作やディレクション業務に携わる中で、デザイナー視点からの社内風土改革を行った事例についてお話いただきました。具体的には、混戦の売り場にて、お客様に伝わるデザインとは?という視点で、社内で制定したパッケージデザインポリシーについてや、年間を通じ多数の商品が発売される食品メーカーにおけるインハウスデザイナーとして、社内でどのように活動しているかをご紹介いただきました。また、「伝わるデザインプロジェクト」として、自社の資産を守ることと新しく挑戦することを意識した活動内容についても、実際に発売された商品の事例を提示しながら、ご説明いただきました。

1.会社と講師の紹介

 カルビー株式会社は1949年広島で創立 。社名の由来はカルシウムの“カル”とビタミンB1の“ビー”を組み合わせた造語で、人々の健康に役立つ商品作りを目指して名付けられた。スナックとシリアルの両軸の商品を展開している。カルビーのインハウスデザイナーは、現在たったの2名。商品企画や戦略策定・SNSやアプリ開発などを行うマーケティング本部内にあるが、商品数が多く、ポテトチップスだけでも新商品は年間100種類以上あり、毎週発売しているような状況で、すべての商品には関われない。そのため、マーケティング本部の戦略として重要視されているものやコラボ案件、デザイン視点で協創できるものに特化して活動している。デザイン制作は外注がメインであり、インハウスデザイナーは業務の8割がディレクションで残り2割がデザイン作成とのこと。なお、両方を経験し続けることで、両方の業務の質が向上できると考えている。「らしさを知って らしさを飛びこえる」を合言葉とし、ロングセラーブランドを守りつつ、必要な部分を変えていくことにデザインからアプローチしている。そのために、「伝わるデザインプロジェクト」を立ち上げ、商品の資産を守ることと価値を広げていくことの両軸を意識して活動中とのこと。

講演概要

2.資産を守るために

(1)カルビーらしさの定義
 会社の資産である商品を守っていくために、まずは、商品企画において、以下のように「カルビーらしさ」と「パッケージデザインポリシー」を制定し、社内で共有。

・カルビーらしさ:“Be Friendly! Be Charming!” …フレンドリーにはお客様に対するわかりやすさの提供も含まれるとのこと。

・パッケージデザインポリシー:“ONE Message, ONE Product” …キーメッセージはひとつであり、1番伝えたいポイントは誰が見ても分かること、情報が溢れる現代において、ポイントを1つに絞ることは重要。

(2)デザインのオリエンシート

 パッケージデザインのオリエンシートのフォーマットを決めて、デザイナーでない社員が社外のデザイナーへのデザイン制作依頼の目的をぶれなくする工夫をしている。オリエンの結果 、社外のデザイナーから出てきたデザインをオリエンシートの内容を忘れて、主観で選びがちだが、オリエンシートで表現したこと(優先順位等)がちゃんと反映されているかを考えて判断することの重要性を社員に伝えている。

(3)デザインの勉強会の開催

 2021年よりスタートした勉強会では、社外のデザイナーとのかかわり方やオリエンシートの作り方、色や書体、印刷手法に至るまで、デザインに関わる情報などを発信している。社外のデザイナーとのコミュニケーションが円滑になるように、お互いにパートナーとして認められるようにとの思いが込められているとのこと。ONE Message, ONE Product は日々忙しいお客様が店頭で見て商品を理解するためには、ここだけは伝わって欲しいことに絞る必要があるため。カルビーは、パッケージはお客様と直接コミュニケーションをとれる媒体ツールとして重視している。

講演概要

3.価値を広げていくこと

(1)長場雄氏とのコラボデザインのパッケージ

 長場氏の世界観を実現するため、社内ルールの商品写真を1点載せる以外は白地に黒線画のみのデザインとした。中身は通常商品と同じだが、量を少なくし、一人で買いやすいサイズと価格とした。パッケージに惹かれて思わず購入してしまうパケ買いを狙った施策。なお、代理店は通さず、直接デザイナーの事務所に依頼した。パッケージと同じイラストのグッズも販売。その結果、普段取り上げられないようなファッション系メディアにも取り上げられ、盛り上げることができた。

(2)デコレーションパッケージ

 飾って楽しむポテトチップスというコンセプトでシンプルなデザインの金色ベースのパッケージに、お客様でシールを貼るなどしてデコレーションを楽しんでいただくというもの。ポテトチップスの袋が膨らんでおり、パーティーで飾るバルーンのようだというメンバーの発想をヒントに生まれた。

(3)かっぱえびせんの日Create!

 パッケージのメインデザインを4名のクリエイターに書いてもらい、4つの個性的なかっぱえびせんパッケージを発売した。本商品の認知率は高いが、お馴染み故の古い感じで新鮮味に欠けるという悩みがあったので、かっぱえびせんってなんかワクワクすると思ってもらいたいとの想いからチャレンジしている。

 講師の長澤氏は、非常に興味深い内容をわかりやすくお話いただき、また、参加者からの質問にも、丁寧に回答いただき、とても共感できる点が多い懇話会でした。私も、コラボデザインパッケージの魅力に惹かれ、その日は近くのコンビニで、ヨシタケシンスケ氏とのコラボデザインのかっぱえびせんを購入して帰路につきました。

講演概要

(アサヒビール(株) 宮下 裕介)

第161回
2022年 11月25日(金) 15:00~17:00
ZoomによるWeb講演
花王(株)作成センター 商品デザイン作成部 デザインソリューショングループ シニアマネジャー 平田 智久氏

テーマ:花王の「ESG経営」とインハウスデザイナーのモノづくりの考え方

講師:平田 智久 氏
花王(株)作成センター
商品デザイン作成部
デザインソリューショングループ
シニアマネジャー

参加者数:39名

講演概要:

 花王(株)の商品デザイン作成部デザインソリューショングループでシニアマネジャーとしてご活躍されている平田氏の視点から『花王の「ESG戦略」とインハウスデザイナーのモノづくり』というテーマでご講演いただきました。

 平田氏は1994年に花王に入社され、印刷センターで画像加工、機能デザイン開発室でユニバーサルデザインや環境などに配慮した商品、プロダクトデザインチームで容器のスタイリング等、色々な経歴を経て現在のデザインソリューショングループに所属されています。

講演概要

1.花王グループのご紹介

 花王(株)は1887年(明治20年)創業、以来130年にわたって日本の生活を変える画期的な製品を生み出し続け、社会と生活者のニーズに応えるため「清潔」「美」「環境」「健康」「生命」と事業領域を拡大し、現在も新たな価値と市場を創造している。

(1)ESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」

・自分自身の生活が清潔で満ち足りているだけではなく周りの世界も満ち足りていることを大切にすること。

・すべてに思いやりが満ちていること。

・心豊かな暮らしが毎日だけではなくこれからも続くと安心できること。

 「Kirei Lifestyle Plan」は花王の商品だけではなく事業あらゆる面で指針とされ、革新を進める。2030年までのコミットメントとアクションを定め遂行している。

(2)環境対応への取組み(包装容器編)

 花王の考える包装容器の5大機能(内容物の保護・物流適性・お客様とのコミュニケーション・ユニバーサルデザイン性・環境適合性)を大切に包装容器を開発している。

 2018年10月に発表した「私たちのプラスチック容器宣言」をベースに「花王は包装容器の世界を根本から革新します」の思いのもと4Rを推進する。

4R:Reduce(減らす)/Replace(置き換える)/Reuse(再利用する)/Recycle(リサイクルする)

 ただ単純に環境負荷がかかりにくいように容器の仕様だけを変えれば良いわけではなく、どんなに環境に良くても使いにくくては生活に定着しない、いかにして使いやすいものを提供するかということでインハウスデザイナーや研究所、外部メーカーと一緒になって使いやすいものを開発している。

(3)花王のインハウスデザイナー

 130年前に花王石鹸を売り出した創始者 長瀬富郎の商品哲学は花王の理念の「よきモノづくり」を体現するもので現在も花王のブランディングの土台となっている。(長瀬富郎の商品哲学:機能や効能だけでなく、容器、デザイン、広告まですべてにおいて最良のものを求め、暮らしの満足度を高める文化を発信、商品にする)

 世の中が環境やユニバーサルデザインに目が向いていく中で企業活動に求められるものが変化する。

 ESGの視点(Environment(環境)・Social(社会)・Governance(統治))やサステナビリティ推進等の取組みが重要視される。花王の伝統的である「よきモノづくり」と現代の「ESG」を具現化する事が花王のインハウスデザイナーの役割と考える。

講演概要 講演概要

●インハウスデザイナーの役割

 生活現場主義で花王のモノづくりを生活者に届けるためにプロジェクトの初期から参画する。

 商品開発、ものづくり(プロダクトデザイン)→ブランド、商品デザイン→生産(プロダクト・印刷)→発売→発売後の生活の現場(生活価値探索)までインハウスデザイナーが携わっている。

 インハウスデザイナーの強みである社内外の多くの部署と連携しながら具現化する。専門職能集団として、インハウスという特性を十分に活かし、商品開発の川上から関連部署と一体になり商品を作る、それがお客様の手元に届き長く愛されるものになっている。

講演概要 講演概要

2.花王のモノづくり事例

●クイックルミニワイパー

 トイレ用掃除用品としてシートやスプレータイプのものや洗剤は既に販売されているが廊下や部屋の床、壁に対応するものがないということで開発が始まる。「トイレなど奥を拭くときに手が届かない」「便器の奥の床に手が届かない」等のお困りの声があった。

・リサーチ/お客様がどのように掃除をしているのか、世の中にどのようなものがあるのか等徹底的にリサーチ ・ラピットタイピング/手づくりで試作したり巷に売っている日用品商品を材料に作製し、道具開発をする、実際に自分で使ってみることで必要な性能がわかっていく、それをマッピングして性能を比較する ・プロトタイピング/性能比較でわかった課題を元に、3D-CADでモデル化して実際に使ってみて実験をする ・調査/一般家庭と店舗と介護家庭で調査、デザイナーも訪問に同伴し生の声をフィードバックする 介護、店舗よりも一般家庭から高い評価を得る リサーチから調査まで何度も繰り返す ・商品最適化/柄の長さやヘッドサイズのブラッシュアップ、シートの取り付け方法をマグネット式に ・調査:発売前の最終調査を行う ・発売:「トイレ掃除が格段に楽になった」「手が汚れにくいから掃除をする気が起きた」等開発者の思いが反映される結果になった。当初想定したよりも良い反響だった。

●アタックZERO

 お洗濯時のストレスを軽減するため誰にでも使いやすいワンハンド容器を開発する。

 キャップ計量の工程を分解して使用者のストレスを探る ・キャップを開ける時/両手を使う、キャップが開けにくい ・計量時/目盛りが見にくい ・注ぐ時/目盛りより多めに注いでしまう、こぼれる、手に付く ・投入時/液切れが悪い ・キャップを閉める時/両手を使う。

 これまでもワンプッシュで一定量測れる容器の液洗剤や計量なしで使えるシートタイプの粉末洗剤を販売しているがストレスなしで使えるとは言い難いものだった。正確な計量性や片手で使えることを実現するために一般的にシャンプー等に使われるポンプタイプの容器を採用した。計量工程を片手でできることと開ける作業がなくなることで使用者ストレスを軽減。

 生活の場で繰り返し探索する。いろいろな家庭で実際に使用してもらい(家庭訪問対象者:2,756人)繰り返し改良後商品となる。ワンハンドで洗剤投入できる便利さから子育てママやご高齢者や障害を持っているからも満足される。2020年GOOD DESIGN AWARD BEST100を受賞した。形状を変えて中国へも販売拡大する。

 他事例としてニャンとも清潔トイレの遊びクリエイティブによるファン拡大事例をご紹介いただきました。

 花王石鹸から現在の商品まで基本のモノづくり理念は変わらないことに驚きました。生活者視点でのリサーチから花王基準の商品をつくるまでの工程は想像より妥協がなくインハウスデザイナーの重要性を感じました。

講演概要 講演概要

(KISCO(株)上田 さわ)

第162回
2023年 2月17日(金) 15:00~17:00
ZoomによるWeb講演
東京工業大学 工学院機械系 教授 西田 佳史氏

テーマ:生活機能の変化を織り込み済みにするデザイン

講師:西田 佳史 氏
東京工業大学
工学院機械系 教授

参加者数:27名

講演概要:

 東京工業大学にて工学院機械系の教授としてご活躍中の西田氏より、生活データを活用し、新たなニーズを探り、介護施設や保育施設と連携して新たな価値づくりをする実践例、AIを用いた新たなビックデータ解析手法などをご紹介していただきました。

1.「~が無いこと」から「~を扱える能力」へ by ヨハン・ガルトゥング(平和学者)

 【「~が無いこと」という消極的な定義を「~を扱える能力」という前向きな定義に置き替えることにより、我々はより高い目標を目指すことができる。】

(例)

 平和⇒紛争・暴力の不在 ではなく 紛争・暴力に対処できる能力

 健康⇒病気の不在 ではなく 病気に対処できる能力

 安全⇒事故・危険の不在 ではなく 事故・危険に対処できる能力

 参加⇒孤立の不在 ではなく 孤立に対処できる能力

・同様の考え方を用い、「生活機能変化に伴い発生する、そのままでは制御できない社会問題(高齢者の転倒事故等)を、生活の詳細な理解を通じて(センシング技術等)、新たな要素(機能、デザイン等)を追加することで、制御できる産業問題へ変換する」研究を行っている。

2.(事例1)一般住宅型リビングラボを用いた高齢者の生活変化のモニタリング

・センシング技術の進化に伴い、大きな負担なく一個人の変化を長期間捕捉できるようになってきている。

・廊下の手すりにIoTセンサーがついた一般住宅型リビングラボに88歳女性の方に長期間住んでいただき、日々の歩行速度の変化を記録(歩行速度と要介護リスクには相関関係あり)。

・疲労感や膝の状況の悪化などの症状は定量的に計測できないが、その結果として現れる歩行状態の変化として定量的な計測が可能(下グラフご参照)。

・また、転倒の予兆である「つまずきの回数」をモニタリングすることで、転倒をある程度予見し、将来の転倒事故を未然に防げる可能性がある。

講演概要 講演概要

3.(事例2)「川崎ウェルテック」の取り組み事例

●クイックルミニワイパー

・川崎市×東京工業大学×産業技術総合研究所が共同運営する企業の製品改良を支援する組織。工業デザイナーとビッグデータ保有機関の知見も製品改良に活用。

・高齢者の誤使用・不注意起因の製品事故は増加傾向。高齢者はいろいろな場所に体重をかけて体を支える必要があり、いわゆる「家具のつえ化」が日常的に発生している。一方で、家具自体は荷重がかかることを想定されていないケースも多く、実際に転倒事故が発生。

・高齢者が家のどこを触って、どこに体重をかけるのかをセンサーを使って可視化。福井県で70代女性の方にセンサーを装着し、身体保持が行われるような行動を各場所で実際に行っていただいた。その結果、床、背もたれ、机の端、ベッド端、椅子の肘おき等に大きな力がかかっていることが判明。

・工業デザイナーの知見も入れ、家具の機能・デザインを改良することで、体重を支えられる機能も持ち、デザイン面でも魅力ある試作家具を製作中。実際の製品改良に活用することを目指す。

「身体保持機能」を高齢者の生活空間につくるという新たな発想で、高齢者を「衰弱の悪循環」から「活動的な生活への良循環」に導くことを目指している。

講演概要 講演概要
講演概要

4.(事例3)テキストマイニング(AI)技術を用いた予防支援技術

・学校で発生する事故のビックデータを解析する手法を新たに開発。「えがお検索システム」という事故検索システムに実装。

・既存の事故データベースは、数が100万件と膨大でかつテキストデータであり、これまで人手での解析が困難であった。テキストマイニング(AI)の手法を用いて事故の普遍性(よく発生するのか?)と重要性(重症につながるのか?)の二軸で対策優先度の高い事例を抽出することができる。

◆センシング、AI等の最先端技術の進化に驚くとともに、西田先生がこども、高齢者に関する様々な社会問題を解決すべく奮闘されている姿を拝見し、大変興味深かったです。高齢者に徐々に近づいていく漠然とした不安があったのですが、未来に希望を感じることができました。

((株)一九堂印刷所 真山 健)

講演概要

過去開催実績

開催回 開催概要
第147回
2019年
5月24日

マテリアルデザインの可能性

DRILL DESIGN アートディレクター 安西 葉子 氏

第148回
2019年
8月23日

男女の感性・時代の感性とパッケージデザイン

(株)感性リサーチ プラダクトデザイナー 手塚 祐基 氏

第149回
2019
11月29日

超・個性的なパッケージデザインを生み出すロジック

(株)ヤッホーブルーイング マーケティングディレクター 稲垣 聡 氏

第150回
2020年
7月29日

パッケージデザイン 3つの視点から

JPDA 理事長 エスキース 代表 伊藤 透 氏

第151回
2020年
8月21日

顧客の共感を生むブランディングメソッドとパッケージデザイン

(株)インターブランドジャパン クリエーティブディレクター
宮城 愛彦 氏

第152回
2020年
10月6日

仕組みを知っても修正できない立体錯視の世界~この不条理とどう付き合うか~

明治大学 先端数理科学 インスティテュート 研究特別教授
杉原 厚吉 氏

第153回
2020年
11月27日

このごみは収集できません~マシンガンズ滝沢氏と考える環境問題~

太田プロダクション マシンガンズ 滝沢 秀一 氏

第154回
2021年
2月12日

パッケージデザインを進めるにあたって大切だと思ったこと

元ハウス食品 クリエイティブディレクター 山下 秀俊 氏

第155回
2021年
6月24日

デザインで引き立つおいしさ~品質を超える価値創造~

東北大学大学院 文学研究科 教授 坂井 信之 氏

第156回
2021年
8月27日

パッケージデザインを巡る環境変化-afterコロナを見据えて

日経デザイン編集長 花澤 裕二 氏

第157回
2021年
10月27日

古くて新しいメカニズム、「形・構造・動き」の追求

法政大学 デザイン工学部 准教授 山田 泰之 氏

第158回
2022年
2月18日

食卓を彩る北欧のパッケージデザイン

加藤 真弘 氏

入会ご希望の方は、ホームページの入会のご案内を印刷し必要事項をご記入の上パッケージデザイン懇話会事務局までメールまたはFAXにてご連絡くださいませ。

※パッケージデザイン懇話会事務局:井出 安彦
(E-メール ide@jpi.or.jp, Tel 03-3543-1189)