“世界”を知る

「包装技術」より、包装に関連する世界動向などを扱った記事を抜粋してお届けいたします。

世界の動きを読むことで、日本や包装の進むべき道の模索にお役立ていただければと存じております。

第 19 回2026年
6月号

包装技術 隔月連載
パッケージを取り巻く世界の動向

WorldStar学生賞は,未来の包装を担う若者たちのネットワークを形成する場

株式会社 パッケージング・ストラテジー・ジャパン

取締役社長 森 泰正

WorldStar賞(シニア部門)は今年も盛況で,1月に発表された2026 WorldStar賞には世界36ヵ国から481件の応募があり,複数のカテゴリーでの受賞数を合わせると234件の入賞作品が選出された。上位5ヵ国の受賞件数は以下の通りで,今年も日本がトップを占めた。これで7年連続の快挙で,他国の追随を許さない。
1位:日本-24件
2位:オーストリア-21件
3位:ドイツと中国-各18件
4位:ブラジル-17件
5位:チェコ・スロバキア-12件

続いて2月には2026年の学生部門の受賞者も発表され,次世代の包装専門家たちの優れた才能が披露された。コンテストには,世界23ヵ国の90の教育機関から246件の応募があった。応募資格は世界20ヵ国で開催されている学生向け包装コンテストのいずれかで受賞歴がある作品となっているが,こうした学生向けのコンテストがない国では,WPO加盟団体や各国の包装技術協会から推薦を受けて,応募することもできる。

学部生から修士課程の学生まで,包装デザイン,工業デザイン,グラフィックス,食品科学,工学,グローバルビジネス研究など,多様な分野の若者が参加している。近年は複数の教育機関の異なる専門分野の学生が連携したコワークチームが革新的な包装技術を創り出すという新しい流れも見られるようになった。

応募作品全体を通して感じられるのは,持続可能性を追求する創造的思考,循環型の包装デザインや,使いやすさに工夫を凝らしてパッケージを介して企業と学生のコミュニケーションの場をつくる試みなど,随所に若者らしい斬新な提案が盛り込まれ注目された。

総合部門の金,銀,銅トロフィーの受賞者とカテゴリー別5件,特別賞4件などに合わせて30個の記念トロフィーが授与された。

入賞件数が多かった国は,中国,オーストリア,ガーナ,トルコ,ハンガリーの各4件で,総合部門で金,銀,銅のトロフィーを獲得したのはフィンランド,ブラジルと中国の学生たちだ。

●金賞:フィンランドのElla Salminen(エラ・サルミネン)さんが考案したプロジェクト“Ease”。使い捨てのプラスチック製カトラリーに代えて,板紙製のカトラリーを容器のラベルに巧みに組み込んでいる(図1)。ScanStar(スカンジナビア包装協会が主催する北欧5ヵ国の共同包装コンテスト)の優秀賞を受賞した学生がWorldStar学生部門の総合最優秀者になるのは,これで2年連続の快挙だ。

図1 Ease
図1 Ease
●銀賞:ブラジルのChristian Alfred Landsberger Glik(クリスチャン・アルフレッド・ランズベルガー・グリック)さんが考案したプロジェクト“Eco-Dosadora”(ポルトガル語で,「経済的で環境に優しい投与システム」の意味)。洗剤や柔軟剤のパウチに計量目盛りを取り付け,計量カップを不要にして,包装コストとプラスチック廃棄物の発生を削減する独創的なアイディアが評価された(図2)。
●銅賞:李晨欣さん(中国)によるプロジェクト「コールドブリューティー(水出し茶)」のパッケージデザイン。伸縮自在のアコーディオン構造のボトルデザインを採用して,包装廃棄物の削減とスペース効率を高めることで,都市部の消費者に向けて持続可能なパッケージの概念を提案している(図3)。

図2 Eco-Dosadora 図3 「コールドブリューティー」パッケージ
(左)図2 Eco-Dosadora , (右)図3 「コールドブリューティー」パッケージ

「若い才能がWorldStarを目指し,包装の分野だけでなく,包装を通して新たな可能性を探求することは大事なことです。学生たちのプロジェクトは,私たちも,包装業界全体でイノベーションと持続可能性を追求し,廃棄物削減に力を尽くすための刺激を受けています」とWPO会長のLuciana氏は語り,次のように続けた。「学生たちは日々の業務のしがらみにとらわれない新鮮な視点で,新たな可能性を探求します。彼らは将来包装のプロフェッショナルとなる存在であり,現代社会におけるパッケージングに変化をもたらすことが期待されています。このことを彼らに伝えていきたいと思っています」(Luciana氏)。

2026年のWorldStar Student部門を主催した南アフリカのIPSA(南アフリカ包装協会)の代表Bill Marshall(ビル・マーシャル)氏は,次のように付け加える。「世界各地で開催される学生向けパッケージングコンテストは,若い才能に包装という興味深い世界,そして創造的な包装コンセプトに必要な素材,技術,デザイン,マーケティングの独自の組み合わせを体験する機会を提供します。WorldStar Student Awardsに応募できるのは,包装業界でのキャリアがもたらす刺激的な挑戦とやりがいに対する洞察力が,自国で認められた学生たちです。世界的なWorldStar認定資格を取得することは,学生の履歴書を価値あるものにし,彼らが選んだキャリアを後押しすることでしょう」。

WorldStarのシニア部門は,前述したように日本は7年連続で世界最多の入賞作品を輩出しているが,学生部門では残念ながら今回,日本からの受賞はなかった。過去には日本の学生チームも受賞しているが,是非こうした海外のイベントに若い学生諸君も積極的に参加して,日本の包装技術のレベルの高さを海外に示して欲しいと思う。国際的な場で若い才能が刺激し合い,切磋琢磨して,世界にネットワークを拡げることができれば,日本の包装業界の層が厚くなり,国際的な地位が更に向上することが期待される。
※受賞者一覧は,WorldStar Studentの公式website:www.worldstarstudent.org でご覧いただける。