“世界”を知る

「包装技術」より、包装に関連する世界動向などを扱った記事を抜粋してお届けいたします。

世界の動きを読むことで、日本や包装の進むべき道の模索にお役立ていただければと存じております。

第 18 回2026年
4月号

包装技術 隔月連載
パッケージを取り巻く世界の動向

2026年は米国の包装規制(EPR,ほか)から目が離せない

株式会社 パッケージング・ストラテジー・ジャパン

取締役社長 森 泰正

米国の包装規制は,連邦政府が安全・衛生性,表示基準,公正取引を,州政府は持続可能性,廃棄物削減,材料規制を受け持つ。このため,規制が国と州で,また州際で複雑に絡み合った状態となり,企業は最低限の連邦基準を遵守すると同時に,州ごとに異なる厳格な独自の規制にも従わなければならない。

各州が導入準備を進めている拡大生産者責任(EPR)法は,統合的なルールに基づいた制度設計(表示方法,包装デザインも含む)がされなければ,米国市場の食品・飲料・消費財のマーケティングにも大きな影響を及ぼす。また,米国で事業展開をしている日本企業も,日本からの輸出であれ,米国やメキシコなど近隣諸国での生産であれ,当然ながら米国各州の法制度への対策を講じる必要がある。米国の包装業界は既にEPRを施行している先駆的な州(オレゴン州やコロラド州など)におけるEPRの導入事例の教訓を得ており,2026年は今後のEPRのコンプライアンス遵守に向け大きな山場を迎えることになる。

各州でそれぞれに違いはあるものの,どの州のEPR法においても,使用済み包装のリサイクル費用(回収,選別,再生)の負担を生産事業者に求めている。最終的には資源廃棄物のリサイクルに関わる全費用の90%以上を生産事業者が負担する制度設計になるだろう。包装製品を製造,流通,販売する企業にとっては,EPR料金の支払い,市場に投入する包装材料のデータ報告義務,社内プロセスの変更に至るまで,大きな財務的,法務的影響を受ける。また,違反企業には多額の罰金が科せられ,最悪の場合,製品の販売禁止にまで追い込まれる可能性がある。各企業にとって頭の痛い問題だ。

ところで,日本の「容器包装リサイクル法」は,特定指定業者(企業)が再商品化委託費用を負担する建付けになっており,全費用の20~30%,金額にして約500億円を拠出している。残りの70~80%は地方自治体が国民の税金を財源として予算化し,分別収集や選別保管など中間処理に関わる費用を負担している。

オレゴン州は米国でEPR法の導入が最も進んでいる州で,企業から徴収するEPR料金額も既に公表されている。2026年に州が企業から徴収する予定のEPR料金の総額は約1億ドル(150億円)といわれている(出所:国際法律事務所Mayer Brownの2026年2月3日付のブログ-「EPR包装法:概念からコンプライアンスへ」)。オレゴン州のGDPは全米で25位,2,700億ドル(円換算で約42兆円)だ。日本のGDPは,この16倍の665兆円(2025年度推定)ある。もしオレゴン州と同率の負担割合が日本で課されると仮定すれば,総額は2,400億円相当になる。リサイクル費用の運用規模はGDP比較で算出するより,人口一人当たりに要する廃棄物管理のシステム費用で換算する方が適切だろう。オレゴン州の人口は約430万人(日本は28倍)なので,この場合は4,200億円となる。

世界の潮流は,受益者ではなくて,環境負荷を発生するメーカー側が負担すべきという論調なので,もし日本でもこの考え方が導入されるとEPRは企業にとって非常に厳しい制度になる。今後,日本でも廃棄物削減の現実的手法として,リサイクルか,熱回収か,それとも埋立て処理なのか,ベストプラクティスの選択肢を追求する掘り下げた議論が必要だ。

●EPRに対する懸念と疑念(州ごとに異なる規制,複雑な制度)

米国では既に複数の州でEPRが法制化され,実施段階に入りつつある。そこでは生産事業者の関心は,企業が負担するEPR料金や,エコ・モジュレーションなどの制度設計の細目に移っている。ただ全ての州でこのプロセスが順調に進んでいるわけではない。

例えば,カリフォルニア州では規則の審議プロセス(2024~2025年)で,最終案の討議が時間切れとなり未採択のまま終了したため,2022年成立のSB54(プラスチック汚染防止・包装生産者責任法)は,一部の規則や廃棄物発生源削減プログラムの見直しをする必要があり,改めてパブリックコメントを実施,このプロセスは2月13日に終了した。現在,CalRecycle(カリフォルニア州資源リサイクル回収局)は寄せられたコメントのレビューを行っている。この後,改訂規則が最終決定されると,PRO(生産者責任組織-州が選定,業務委託する廃棄物管理機関。カリフォルニア州の場合はCAA)は,2026年6月15日までにプログラム実施計画を議会に提出,承認を受け,完全施行は現時点で2027年1月1日になる見込みだ。

また,オレゴン州では,全米卸売協会(NAW)が「同州のEPR法は,州をまたいで事業展開する卸売業者に過重な負担を強いている。NAWが取り扱う商品のサプライチェーンが不安定になる」とオレゴン州の地裁に違憲訴訟を起し,同地裁は2月9日に一部項目を除いて,州当局に対し請求仮差し止めの判断を下した。結審は7月に下される。

このようにEPRは各州でバラバラに進められ,プロセスにも紆余曲折があり,規制当局も公聴会を開催し,パブコメを再募集するなど,混乱している。本格施行は延期・修正される可能性も高い。

●連邦レベルの包装規制の動向

一方,連邦レベルでは,Steward Act *1Circle Act *2などリサイクルへの投資拡大を促す新法案や,使用済み包装のリサイクルに関する包装表示を全米で統一する法案Pack Act *3が提出され,連邦議会の委員会で審議に入っている。

  • *1 Steward Act:2025年11月に米国上院で可決された廃棄物削減及びリサイクルを促進するための超党派の連邦法案で,米国におけるリサイクル・堆肥化インフラの新設や更新,標準化を目指している。この法律は,廃棄物管理のためのデータ収集と改善,農村や過疎地の住民のリサイクルサービスへのアクセス向上と助成金プログラムによる地域の持続可能性に向けた支援をEPA(米国環境庁)に求めている。
  • *2 Circle ActCultivating Investment in Recycling and Circular Local Economies-リサイクルと循環型地域経済への投資促進法(CIRCLE)の略称で,国内のリサイクルインフラ強化を目的に,2025年7月に超党派の法案(HR4466)として提出され,現在,連邦議会の下院歳入委員会で審議中だ。民間企業に対する30%の投資税額控除と,自治体の廃棄物削減の近代化投資に直接資金還付を行うことが骨子で,米国で圧倒的に多い埋立て廃棄の削減を目指している。
  • *3 Pack ActPackaging and Claims Knowledge Act(包装・表示知識法)の略称で,2025年末に共和,民主の超党派の有志議員連名で連邦議会下院に提出された。目的は,各州でバラバラな包装表示を改め,全米で統一された基準による表示を目指している。この法案は,FTCが「リサイクル可能」,「堆肥化可能」,「再利用可能」表示に関して科学的根拠に基づいた全米で統一された第三者認証基準を策定し,企業や消費者の混乱解消を目指している。

なお,Pack ActはAMERIPEN,米国軟包装協会(FPA),米国飲料協会(ABA),生分解性製品協会(BPI)など,民間の包装団体の支持も得ている。彼らは,できるだけ早期に,包装にリサイクル可能,堆肥化可能,再利用可能なことを示す,標準化された表示の導入を求めている。また,一定の基準を満たしていない包装について,よく知られた矢印を三角形にして囲ったリサイクルの樹脂識別コード(PETは「1」,HDPEは「2」など)の記載禁止も求めている。

議会以外では,FDAの動向に注目する必要がある。FDAは,最近,2026年の優先課題を発表した。そのひとつが‘Human Foods Program(HFP)’*4で,栄養成分表示を包装・容器の裏面から前面に移すことなどがある。また,安全な食品添加物として認知されているGRAS(‘Generally Recognized As Safe’の略で,一般に安全と認められる物質のこと)の見直しや,食品中のマイクロプラスチック規制なども含まれる。

  • *4 2024年10月1日に設けられたHFP制度は,最新科学に基づいた手法による食品の安全性と栄養を確保することを目的としている。食中毒の予防,食生活に関連する慢性疾患の削減,化学物質の安全性向上を目的としている。また,FDAは汚染リスクの高い食品について,生産者の記録管理とトレーサビリティ対応力を強化し,食中毒など重大事案が発生した際には,24時間以内にその発生源やサプライヤーを迅速,容易に特定できる制度設計を求め,「食品トレーサビリティ規則(FSMA 204条)」を改訂した。食品メーカーや小売業者,包装メーカーはこれを受け,サプライチェーン全体で必要不可欠なデータを●揃えるために,包装容器にRFID(「無線通信による識別」。電波を用いてICタグやRFタグの情報を非接触型の読み書きできる自動認識技術)によるデジタル・トレーサビリティ技術の普及を進めており,2年後の2028年には法制化される。これも日本企業にとって留意すべき法改正だ。

●日本企業が注意を払うべき米国のEPR法

以上のように,包装製品に関する規制は,州法,連邦法に数多く存在し,また州によっても異なるため,米国で事業展開する日本企業は,十分注意を払い,準備をする必要がある。

以下に,日本企業が留意すべき米国のEPRについて要点を記す。

・包装EPR法は,包装製品を販売するほとんどの企業が対象となる

EPRは,使用済み包装の廃棄に関する財政的責任を,自治体から「生産者事業者」に移すものだ。生産者事業者は,包装製品を販売する者と定義されている。州によって異なるが,⑴包装製品のブランドオーナー(またはライセンシー),⑵包装製品の生産事業者(包装自体の生産者の場合もある),⑶包装製品の輸入業者,⑷包装製品の販売業者や小売業者(ストアブランド生産者)が含まれる。一部の州では,製品の包装と配送を行うeコマースの出店者も,EPR規制対象の生産事業者とされている。

・包装EPR法は,あらゆる形状や形態の包装に適用される

あらゆる消費財包装(プラスチックフィルムや軟包装,容器・瓶,紙器など)を対象としており,その材質は問わない。リサイクルの容易さやリサイクル実績に応じて負担金は大きく異なる(エコ・モジュレーション制度)。

対象となる材料リストは,常に見直しが行われる。また,規則は州によって異なる。現時点では統一されたルールがないことから,各企業は当該地域におけるEPR法(含む施行規則や細則)を常にアップデートして対応する必要がある。

以下に,州ごとに異なる例として,各州のEPRの対象となる包装や製品を挙げる。

  • -カリフォルニア州:使い捨て包装,食品用の持ち帰り容器
  • -コロラド州:使い捨て,または短期使用を目的とした包装と紙製品
  • -メイン州:製品配送(eコマースを含む)に使用される包装
  • -メリーランド州:全ての包装と紙製品
  • -ミネソタ州:全ての包装と紙製品
  • -オレゴン州:全ての包装,印刷用紙,食品の持ち帰り用食器
  • -ワシントン州:全ての包装と紙製品

「包装」の定義も州によって異なる場合があり,また,例外や免除規定(処方薬,医療機器,乳児用調合乳,危険物などに使用される包装材料)もあるので注意されたい。

・対象となる生産事業者は,生産者責任組織(PRO)への加入義務がある

EPR対象企業の主な義務は,州が認定する生産者責任組織(PRO)への加入登録,使用する包装材の量に応じたPROへのEPR料金支払い,包装材料の種類や重量に関するデータ報告だ。一方,PROは使用済み包装材のリサイクルプログラムの作成責任,EPR料金の徴収責任がある。今後10年の間には,全米50州で実施される可能性が高い。