“世界”を知る

「包装技術」より、包装に関連する世界動向などを扱った記事を抜粋してお届けいたします。

世界の動きを読むことで、日本や包装の進むべき道の模索にお役立ていただければと存じております。

第 17 回2026年
2月号

包装技術 隔月連載
パッケージを取り巻く世界の動向

K 2025で浮き彫りになったEUプラスチック産業の危機と欧州経済復興への道

株式会社 パッケージング・ストラテジー・ジャパン

取締役社長 森 泰正

「プラスチックの力!グリーン,スマート,そして環境に責任を持つ」というテーマの下にドイツのデュッセルドルフで開催されたK 2025には,世界の160ヵ国から17.5万人を超えるプラスチック・ゴム業界の専門家が集まり,3千社を超える出展企業が自社の技術,製品,プロセスを紹介した。

Messe Düsseldorfが発表した資料によると,来場者の73%は海外からの来場者で,アジアからは中国が6,300人,インド6,400人が来場,米州からは米国とブラジルあわせて1万人が来場した。

機械・エンジニアリング企業は,製造システムや実演デモを通じて,その効率性,精密性,省資源化をアピールした。素材部門では,機能性と持続可能性の両立を訴求するバイオベース素材,再生材を活用したコンパウンド製品や,高機能添加剤などが展示された。

Plastics Europe DeutschlandとMesse Düsseldorfが共催した「プラスチックが未来を創る」と題したセミナーでは,様々なテーマで専門家による講演,パネルディスカッション,スタートアップ企業の講演が行われた。

Plastics Europe(欧州のプラスチックメーカー,フィルムメーカー,コンバーター,機械メーカー,再生業者等100社強が加盟するNGO)は,世界と欧州のプラスチック生産量と経済指標に関する最新の‘Plastics the Fast Facts’の調査結果を公表した(グラフ「World plastics production」)。

出所:Plastic Europe ‘Plastics the Fast Facts’ 2025年版
出所:Plastic Europe ‘Plastics the Fast Facts’ 2025年版

それによれば,2024年の世界のPCR生産量は4千万トン,伸びは前年比4.0%で,全プラスチック生産量(4.3億トン)の約10%を占めた。しかし,2018年から2024年にかけて,EUの全プラスチック生産量は過去最低水準にとどまっており,バイオプラスチックの生産量は25%減,PCRの生産量も横ばいのまま低迷している。輸出入に関しても,EUは3年連続でプラスチックの純輸入国に転じており,米国がEUに対し最大のプラスチック供給源となっている。

一方輸出に関しては,EUの米国への輸出量は4番手の地位に甘んじている。同報告書によれば,中国が世界の再生プラスチックの生産の伸びの大半を占め,2年間で16%以上の成長を遂げていることも判明した。明らかにEUの国際競争力は弱体化している。

これらの調査結果を踏まえ,Plastics Europeは,EU委員会に緊急支援策を要請している。世界に冠たる循環型プラスチック市場を構築,良質のPCR安定供給態勢を確立して,EUのプラスチック産業と企業の復活を目指すことを改めて表明した。また,2050年のプラスチックリサイクル率:65%とGHG排出ネットゼロ達成を,揺るぎない目標として,世界にアピールした。

更にPlastics EuropeはEU委員会と加盟各国の政策責任者に対し,EUの突出したエネルギーコストに対する助成策,通関時のEU法規制の徹底,EUの循環型プラスチック生産の推進と障壁の撤廃,化学物質・プラスチック貿易の監視機関の設立と規制強化を訴えた。

欧州委員会も決して座して黙しているわけではない。これに先立つ8月初め,Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長が提起しJessika Roswall(ジェシカ・ロスワル)環境委員が主導するEU循環経済法(CEA)が議会に提出され,2026年4Qまでの採択を目指している。これは,欧州の新たなクリーン産業政策の礎となるもので,資源不足,廃棄物の増大,世界的な競争が激化する中,EUの産業政策を変革して直面する環境問題を将来のEUの戦略的成長に転換するための制度設計だ。

CEAはClean Industrial Deal(クリーン産業協定)の柱の一つとして,システム改革の推進,循環型製品の育成,複雑な法規制を簡素化し,EUのグリーン・トランジションの推進とインフラ投資の活性化を促す役割がある。EU委員会は,CEAに関するパブリック・コンサルテーションを11月6日まで行った。このプロセスはEU企業にとって,自らの意思や考え方を法案に反映させる重要な機会で,産業界からの戦略的かつ根拠に基づく提案を,新法に反映させる狙いがある。

CEAは包装だけでなく,電子機器,自動車,化学,建設,繊維など幅広い産業分野に適用される基本法で,その狙いはEUの競争力の回復と,国際ルールの健全な形成を目指し,以下の2点に重点的に取り組む。

・EUが先行する脱炭素化と廃棄物管理政策の法的枠組みの強化

・EU市場重視(優先)の資金投入と,循環型社会創出のための国際ルールの形成

‘European preference’政策の導入(2026年)-目的は,欧州の供給者を優先することで第三国への依存を減らし,EUの自衛能力を強化する

⑴ 欧州の商品,企業,労働者への支援

⑵ 公共/防衛部門におけるEU製品の優先調達

⑶ 地域産業の活性化,雇用創出,地域安全保障の担保

パッケージに関しては,PPWRが厳格に適用され,域外の安値のバージンプラスチックや素性が不明な再生材の流入に対しては断固とした措置が取られるだろう。