FACHPACK は,ドイツのニュルンベルクで40年以上にわたり開催されてきた国際包装見本市で,コンパクト(東京パックと同じくらいの規模で,主に欧州全域の企業が出展している)で,かつ包括的な洞察と新たな事業機会を提案してきた。今,包装業界に起こっているデジタル化,EU の規制,素材の革新,そして持続可能な新技術の登場についての情報収集と業際間協業のネットワークを形成するガイドとして欠かせない存在となっている。今年も包装業界の関係者を繋いで,次世代のソリューションとビジネスモデルを活発に議論する場となった。以下に,今年関心を集めた展示を紹介する。
○ スペインのBarcellona に拠点をおく容器メーカーEvopack は,Bag-in-Box 仕様の液体コンテナBoxli 1000 とBoxli 500 を出展した(図1)。
Boxli 1000 は,同じ1,000L 容量のプラスチックや金属容器と比較して,GHG排出量,保管・輸送コストを最大70%削減できる。さらに,従来のHDPE製容器とスチールケージの中間バルクコンテナ(IBC)に比べ,マテリアルハンドリング性と安全性を改善した。
新製品のBoxli 500 は,500L の液体を収容,輸送・保管ができるBag-in-Box で欧州圏の物流の標準的サイズのユーロ パレットサイズ(1,200×800mm)に適合する。比較的少サイズの液体製品の物流に適している。
Boxli システムは,塗料,接着剤,バインダー,食品,医薬品,さらには繊維関連品など,非危険液体製品に最適で,製品の酸化を防ぎ,改ざん防止にも威力を発揮する。

図1 スペインのEvopack 社,ドイツを代表する工業用段ボール容器大手のTricor 社とミュンヘンの革新的なプラスチック内袋のサプライヤーRingmetall 社は,昨年のFACHPACK で出会い,協業を進め,Evopackの独自技術「蓋モジュール」を組み合わせた新Boxli シリーズを1年で完成,今年のFACHPACK に出展した。組み立てが容易,酸素バリア性に優れ,多様な液体製品の輸送・保管に最適だ。


○ ドイツを代表する包装コンバーターSÜDPACKはHFFS 包装機で充填されたドライフード用モノマテリアルPE のスタンディングパウチを展示した(図2)。同社のPure-Line は,シュレッドチーズ,サラミスティック,ナッツミックスやドッグトリーツなど,さまざまなスナック製品に適合する機能を提供する。パウチにはPE ジッパーを装着,完全密封と易開封・再封止機能を提供し,酸素や水蒸気バリア,紫外線カット,防曇機能も備えているので長期保存も可能だ。
ケルンの包装機メーカーSN MaschinenbauのFME 50 横型自動充填包装ラインを使用して充填・包装されており,コンパクトな省スペース設計が特徴で,フォーマット変更などの操作も容易だ。
○ ドイツが誇る特殊紙メーカーで,紙基材の軟包装で存在感を高めているKoehler の新製品NexPlus Seal Coat バリア紙が,FACHPACK2025で発表された(図3)。
高光沢の仕上がりと優れた耐屈曲性を備え,リサイクルを考慮して設計されており,ドイツの環境サービスプロバイダーInterzeroの‘Made for Recycling ’ 認証を取得している。
この紙基材は,プラスチック包装の代替品として設計され,フレキソ・グラビア・デジタル印刷に対応,独自技術により高光沢の外観と耐クラック性を創り上げた。同社によればプラスチック基材と同じ包装速度で製袋可能で,低温ヒートシール性も良好だという。
○ イタリアを代表する包装機械メーカーCoesia傘下のスウェーデン企業Norden はチューブ製品の充填システム設計と機械製造を専門とする企業だ。FACHPACK 2025では食品,医薬品,パーソナルケア製品など消費者包装分野で効率性を最大限高めたカートンフォーマNC100を展示した(図4)。
この自動充填タイプの紙器ラインは10インチのタッチスクリーンを備え,最大50種類のフォーマット変更を高速で自動処理する。
FACHPACK ではNorden 始め,Coesia グループの関連企業のFlexlink,AMACO,Volpakの責任者が集結して,自動化分野における開発パイプラインを発表,来場者と積極的なネットワーキングを行った。
○ トレーサビリティ,可変データ,製品識別技術に特化したスイスの機器メーカーMarkem-Imaje は,次世代QR コード(2次元バーコード)が生産効率やサプライチェーンの透明性を高め,在庫管理の合理化とブランドの信頼を向上するデモを実演した(図5)。
EU のデジタル製品パスポート,デジタルデポジット,米国の食品安全近代化法(FSMA)など,変化が加速する世界的な規制が,2次元バーコードの普及を推進しているという。
同社は,GS1のDigital Link が次世代バーコードを牽引すると主張する。これはGS1識別コード(GTIN など)を起点に関連するウェブ上の情報やサービスを入手するための標準仕様で,B2BとB2Cの両方の情報へのリアルタイムアクセスを可能にする。
Markem-Imaje はデモの最後に,「1次元バーコードと2次元バーコードは当面共存しますが,当社はコンプライアンスから真の消費者エンゲージメントまで,次世代QR コードへの移行のお手伝いをします」とデモの実演を見学した聴衆に訴えた。


○ Syntegonのブースでは,2つの目玉製品が展示され,生産の信頼性,多用性,システムの持続可能性に重点をおいた新鋭機のデモが行われた(図6)。
一つは特許取得済の独立制御のサーボモーター4基で構成されるクロスシール駆動装置が搭載されたカートンフォーマSVX Agile (HFFS )で,コンパクトな設置面積ながら,毎分最大300ユニットという世界最高水準の生産性をFACHPACK の会場で披露した。
基材は板紙とモノマテリアルフィルムの両方に対応できるモジュール型の設計で,ニーズに合わせて柔軟にアップグレードできる。
もう一つは新型カートンクローザーKliklok ACC だ。これはサーボ駆動方式を採用したクローザーで,紙器の仕上がり精度を高め,幅広い紙器サイズと充填する製品タイプに対応するために開発された。工具を使わずにフォーマットの変更が可能で,エネルギー効率の高い統合制御システムを採用し,二次包装工程の合理化を進める企業が求める機能を提供する。


○ フィンランドの林業・製紙メーカーUPM の包装事業部門であるUPM Specialty Papersは,オランダの包装容器メーカーRoyal Vaassenと共同で,木質繊維ベースのリサイクル可能な中~高バリアの包装容器を発表した(図7)。食品用途の安全・衛生基準をクリアしたUPM のバリア紙技術を使用している。
また同社はリサイクル可能なチョコレート包装紙も展示した。この材料は包装ラインスピードと,酸素・油脂の保護機能が改良され,従来のプラスチック材料と同等レベルの性能を実現した。更にBOBST,Michelman と共同開発した紙基材の高バリア,リサイクル可能な軟包装も提案している。これはプラスチックのマルチラミネート包装材に代わる選択肢として開発されたものだ。コーヒー,スパイスなどの高いガスバリア性が求められる用途に特別に設計された。
参考文献
- 1)Packaging Europe 誌, 「Live Updates fromFACHPACK 2025」,2025/9/25