世界包装機構(WPO)は例年通り,世界で最も早く2025年の賞レースの幕開けにふさわしいWorldStar Global Packaging Awards 2025 の受賞作品を発表した。今回の応募作品は世界40ヵ国から過去最多の550点を数え,入賞作品(重複受賞含む)は260点にのぼった。
日本は23点が入賞し,3年連続でトップ受賞国の栄誉を獲得した。オーストリアとドイツは並んで22点が入賞,インドが19点,オーストラリア・ニュージーランドが18点,トルコが17点と続いている。中国が15点,韓国が11点と初の2ケタ受賞を達成するなどアジア勢の健闘も光った。米国は10点であった。

海外の有力包装誌もこのWorld Star賞を注目する。英国のPackaging Europe 誌は,オーストリアのALPLA 社のCleanCharger を採り上げた。このパッケージは,エアレス構造のリユース可能なポンプディスペンサー,同じくリユース可能な二次容器のキーパー,それに極薄で超軽量のリサイクルが容易な100% r-PET を使用した一次容器のカートリッジで構成されている。さまざまな環境上のメリットを備えた「クリーンで迅速,シンプルでスマートな」詰め替えで包装廃棄物の削減を消費者に提案している(図1)。
この包装はYouTube 動画でご覧になれる(https://www.youtube.com/watch?v=ClAs8yPqyRg)。
SEE(旧Sealed Air)社のCRYOVAC FlexPrepportion dispensing パウチも受賞した。これはMcDonald’s Australia が使用する調味料やドレッシングなどの食材ロスを減らすことで高く評価された。またPPWR の要件の一つでもあるHORECA(ホテル,レストランやカフェなど)でゲストに無料で提供するケチャップやマヨネーズなど調味料の小袋規制に適合する業務用の包装システムでもある。外食チェーンで毎年消費されるソースや調味料は膨大な量にのぼる。
FlexPrep パウチ(図2)の導入により,McDonald’ sのバックヤードでは食品廃棄物の発生削減に大きな効果を挙げた。中身を予め充填したパウチをハンディなディスペンサーに装着すれば,最後まで絞り出して使い切ることができる。食品残渣を徹底して減らして(収率98%),適量を正確にゲストに提供できるようにした。
同じような取り組みは食品メーカー自らも行っている。Kraft Heinzは独自開発のEazySauceディスペンサー(図3)を顧客であるフードサービスの店舗に設置してもらい,これまでの小袋を廃止して,ゲストに包装フリーのケチャップやマヨネーズを提供している。これも近々施行される使い捨て小袋の禁止を想定して考案されたもので,多くのファストフード店での採用が拡がると予想される。






Smurfit Westrockの出品作では,デンマークの水生植物生産業Tropica 向けの水耕栽培用の古紙段ボールトレイが受賞した。Tropica は毎日のように世界中の小売店やオンラインショップに水生植物を配送しており,このトレイは側面を接着し,4ヵ所のロック機構で簡単に組み立てができるデザインが特長だ(図4)。上部と下部に切り込みが入っており,商品を詰めて多段に積み重ねてしっかり固定できる(図5)。この段ボールトレイは納入が済めば,フラットにしてTropica に戻して,再利用もできる。
米国のPackaging World 誌が注目するのは,英国の微発泡技術の草分けZotefoams 社が特許を保有するHDPE/r-HDPEのモノマテリアル微発泡多層シートを使用したリサイクルが容易で,容器に取り付けられたテザーキャップも含め,包装全体のHDPE使用比率が95%のプラスチック液体カートンだ。多層シートのコア層にはr-HDPE 層を組み込んで持続可能性をアピールしている(図6)
英国のBiffa 社やフランスのVeolia 社といった大手の廃棄物選別施設で回収,選別できることが確認済みだ。因みにr-HDPEはBiffaから調達してClosed Loop を形成している。世界最大の飲料コントラクトパッカーのRefresco 社は,同社保有の板紙の液体カートンの自動充填包装ラインで,量産ベースの自動充填包装の実証試験を行い大成功した。板紙とHDPEの原反の切替えも,それぞれの専用モジュールを取り替えるだけで,短時間で可能だという。Zotefoamsは既にRefrescoと,パッケージ原反の長期供給契約を締結している。
昨年11月にはシカゴのPack Expoに出展し大きな反響があった。Refresco が受託充填している欧米の大手プライベートブランドのジュースパックに近々採用見込みだ。
Packaging World 誌に掲載されたPack Expoの実演動画は,同誌サイトにて配信されている(https://www.packworld.com/sustainable-packaging/recycling/video/22925987/monomaterial-aseptic-food-contact-hdperhdpe-carton)。

日本の受賞作はさすがに洗練され完成度の高いものが多い。特に日本を代表するグローバル企業SONYがインハウスデザイナーを抜擢し独自開発した,竹・サトウキビ繊維・再生紙の紙素材を用途に合わせて配合した「オリジナルブレンドマテリアル」が注目される。デザイナーが自ら原材料の産地を訪ね,使用する原料を特定し,世界に公開することでトレーサビリティを見える化し,創り上げた無印刷・ラベル不要のパルプモールドのパッケージは,新鮮で消費者の目を惹く(図7)。
パッケージの内外装を一体二層構造の中空にして緩衝性を高め,更にコンパクト化にも成功した。アクセシビリティにも配慮し手の不自由な人も重量のある製品を取り出しやすいように設計している。
なお,受賞者の全リストはWorldStar websiteでご覧になれる。
授賞式は2025年5月27~30日にミラノで開催予定のIPACK-IMA の最終日に行われる。当日は最高の栄誉であるPresident 賞やSustainability賞,Marketing 賞,Save Food Packaging 賞の各賞が発表され,記念の盾が贈られる予定だ。
「2025年の応募数と受賞者の数が信じられないほど多くなったことは,World Star Awardsが世界的に評価され,応募作品の包装技術のレベルが一段と高くなったことを証明するものです」とWPO 会長のLuciana Pellegrino(ルチアナ・ペレグリーノ)氏は語り次のように続ける。「応募されたパッケージ作品は,イノベーション,創造性,テクノロジー,マーケティング,デジタル変革,持続可能性などによって推進される世界の包装業界の大きな進化を示すショールームです」。
「包装業界は,環境や廃棄物など世界が直面する課題に取り組み,現代の消費者の期待に応えながら,持続的な成長を目指しています。過去最高を記録した応募数だけでなく,今年はその質の高さも特筆されます」とWPO のマーケティング担当副社長のSoha Atallah(ソハ・アタラ)氏は付け加えて,次のように結んだ。
「World Star 賞は,各国で公認されているパッケージング賞の入賞者のみに参加資格があります。世界でも最高峰のレベルにある大会であることを強調したいと思います。選考プロセスは厳しく,包装に精通した審査員の方々も入賞者の選定に大変苦労されました」。