“世界”を知る

「包装技術」より、包装に関連する世界動向などを扱った記事を抜粋してお届けいたします。

世界の動きを読むことで、日本や包装の進むべき道の模索にお役立ていただければと存じております。

第 7 回2024年
4月号

包装技術 隔月連載
パッケージを取り巻く世界の動向

2024年の世界のパッケージングの展望(2)

株式会社 パッケージング・ストラテジー・ジャパン

取締役社長 森 泰正

米国のパッケージ規制

EUに比べ遅れていた米国でも,先行する4州では包装のEPR法施行に向けた準備が進んでいる。規制の具体的な中身はこれから本格化すると思われるが,先行したEUのPPWRと骨格は類似のものになると思われる。

日本企業が数多く進出しているカリフォルニア州で2027年に包装EPR法が施行されるとすれば,規制をすべてクリアするためにはそろそろ準備が必要だ。また米国の酪農産物の集積地であるイリノイ州でも2024年には包装EPR法が上程される見込みである。

欧米でEPRがルール化されたら,日本もこれに従わざるを得ない。廃棄物排出のミニマイズに成功している日本のエネルギー回収技術の利点を活かしながら,燃焼インフラの低カーボン化を図り,更には今や世界的潮流となった容器包装のリサイクル・リユースにも積極的に取り組んで循環型社会に向けた日本の姿勢を世界に発信すべきだろう。

米国の包装業界でも,全米各州議会の拡大生産者責任(EPR)法の制定の動きに対して,包装デザインや包装材料の見直しが始まっている。

米国では既に,メイン州,カリフォルニア州,オレゴン州,コロラド州の4州が包装のEPRを議会で可決,知事の署名を受け,施行細目の検討が進んでいる。またイリノイ州とメリーランド州の議会でも昨年EPR法草案が提案されたAMERIPEN(包装の環境基準づくりに,州政府や学術団体と連携して活動する業界団体。メンバーは素材,包装材,消費財,小売り企業や再生業者など。EUROPENやINCPENとも連携する)は,2024年には,全米の州議会でEPR法案が続々に上程されると予測している。

各州で独自に制定するEPR法が増えることが予測されるため,EPRが複雑になることを避け,法遵守を徹底するために,米国の包装業界では,全米で標準化されたEPR規制と料率を設定することを求めているが,米国で複数の州にまたがって事業展開する日本の包装企業やブランドオーナーは,州ごとに異なるルールにも注意を払う必要がある。

以下に各州で進めている新EPRの主な内容と実施スケジュールについて説明する。

メイン州

2021年7月,メイン州は米国内で初めてEPR法を制定した。小規模事業者を除くほぼすべての包装製品を市場に投入する消費財企業(主にブランド・オーナー)は,使用済みの包装容器の回収,選別,再生費用を,法で定められた管理組織(PRO:Producer Responsibility Organization)に支払う義務が生じ,徴収された資金は自治体に払い戻される。公聴会とパブリックコメント期間を含む,規則制定プロセスは,2023年12月31日までに開始される。EPRプログラムの概念的な規則は既に公開されており,順調にいけば2026年秋には施行される予定だ。

メイン州のEPRプログラムは,州政府の環境保護局(DEP)が全体を監督し,単一の生産者責任組織(PRO)を選定して実行責任を委譲し,ニーズ評価,年次報告書,投資予算を承認する仕組みだ。DEPはまた,「容易にリサイクル可能な」パッケージの定義,EPR料金やタイムラインなど,EPRプログラムの具体的なゴールを設定する。

オレゴン州

メイン州から遅れること数週間,オレゴン州は,議会が可決,知事が法案に署名した全米2番目の州となった。同州のEPRは,パッケージだけでなく,紙製品や食品も対象としている。拡大生産者責任を果たすのはメイン州と同様,主にブランドオーナーである。また,同州のEPRは,プラスチックについてリサイクル率とその達成時期のゴールが定められている。また対象となるすべてのパッケージにエコ・モジュレーションを設けて,リサイクル性の容易な包装の料率を低く設定している。

オレゴン州の環境品質局(DEQ)は,複数のPROを承認し,EPR費用の設定と徴収,および対象製品が確実にリサイクルされていることを確認する権限と責任を持つ。対象となる包装製品の生産者は,2025年7月までにPROへの費用支払い準備を完了することが義務付けられた。オレゴン州のEPR費用は,汚染削減プログラムの作成,再生資源廃棄物の回収アクセスポイントの拡大,廃棄物排出防止とリユース助成制度,農村部や遠隔地への輸送コスト補助,PROとDEQの管理費用,住民教育・啓発費用など,オレゴン州内のEPRシステム構築資金に使用される。

オレゴン州のEPR法を施行するためのルール作りは着実に進んでいる。2024年11月には主要規則が承認される予定で,それに続く諸規則も2024年度内の公表に向けて策定作業が進んでいる。

コロラド州

コロラド州は2022年6月にパッケージのEPR法を制定した米国で3番目の州となった。2023年5月,コロラド州公衆衛生環境局(CDPHE)は,NPO法人Circular Action Alliance(CAA)をPROとして選定した。CAAはEPRの遂行・管理とEPRの対象となる生産者がコンプライアンス義務を果たすよう指導する。

2025年7月1日以降,包装製品生産者(ブランドオーナー)は,PROに参加するか,あるいは個別にプログラム計画書を提出し,法律を遵守しなければならない。

CAAはパッケージに使用する素材のリサイクル率を設定し,再生業者や回収,選別業者と直接契約する。またリサイクル性の区分を決め,エコ・モジュレーションのインセンティブや,最低リサイクル率と最低再生材含有量率を設定する。料率はEPRシステムの構築,運用コストを全て賄えるよう設定される。

コロラド州のEPR諮問委員会は,EPRプログラムを周知するために今年の初めから会合を重ね,CDPHEは外部のコンサルタントと契約し,EPR法で規定している包装生産者の義務を策定し,ニーズのヒアリングを行っている。

カリフォルニア州

カリフォルニア州は包装EPR法を制定した全米で4番目の州だ。カリフォルニア州のEPR法は,全ての使い捨てパッケージとプラスチック器具を対象としている。

Cal-Recycleは,カリフォルニア環境保護庁(CalEPA)の一部門で,カリフォルニア州が管理するすべての有機廃棄物の処理,リサイクルプログラムを取り扱っている。Cal-RecycleはPROを監督,協力してニーズ評価と実施プログラム立案,リサイクル率の決定,必要に応じて技術支援を行う。EPRの対象となる包装生産者は2027年1月までにPROに加入し,PROにEPR費用を支払うことが義務づけられる。

カリフォルニア州のEPR法は,対象となるすべての包装材料を,2032年までにリサイクル可能か堆肥化可能にしなければならない。対象となるすべてのプラスチックのリサイクル率は,2028年までに30%,2030年までに40%,2032年までに65%と義務づけられている。対象となる生産者はPROの指導の下,2032年までにプラスチックの使用重量を25%削減,プラスチック使用点数も25%削減することが義務付けられた。

米国でもパッケージのEPR法の発効、あるいは州議会での審議が進み始めた
米国でもパッケージのEPR法の発効、あるいは州議会での審議が進み始めた