“世界”を知る

「包装技術」より、包装に関連する世界動向などを扱った記事を抜粋してお届けいたします。

世界の動きを読むことで、日本や包装の進むべき道の模索にお役立ていただければと存じております。

第 21 回2026年
10月号

包装技術 隔月連載
パッケージを取り巻く世界の動向

バリューチェーン企業が連携し,
地域で紙カップの再資源化向上 を目指す米国の取組み

株式会社 パッケージング・ストラテジー・ジャパン

取締役社長 森 泰正

米国の食品包装容器協会(Foodservice PackagingInstitute:以下,FPIという)は,米国における紙カップのリサイクルが新たな局面に到達したと発表した。家庭や外出先で手軽に使用され捨てられている片面,あるいは両面PE コートの紙カップが,再生可能資源としてリサイクルできるようになりつつあるという。これまで使用済みのPE コート紙カップを受け入れる製紙会社が限定され,再生しても市場価値が低く販売が困難で,紙製品の回収プログラムでも長い間リサイクル禁忌品とされていた。しかし自治体や民間の路上回収や,スーパーなど店舗回収プログラムを通じて,地域でリサイクルができるケースが全米で拡大しつつあり,現在では全国の20%の住民がこのサービスを利用できるようになっているという。

この20%というアクセス率は,FPIが地域連携プログラムを開始した2017年時点では5%台で,2022年になっても11%台に低迷していた。ただ関係者の地道な努力もあり,2025年現在では,全米30以上の地域がこのプログラムに参加,またシアトル,デンバー,フィラデルフィアなど,米国トップ20の大都市のうち13都市が参加するようになり,紙カップのリサイクル率を向上する大きな起爆剤となっている。

FPI は2024年時点で,北米の40以上の製紙工場が使用済み紙コップを受け入れるようになったと発表したが,その後2025年から2026年にかけて米国の多くの製紙工場が閉鎖あるいは統合され,現時点ではその数は35に減少している。

FPI は2018年に紙コップの受け入れと回収を加速させるためPaper Cup Alliance*1という組織を設立した。しかし,FPI によればその道のりはまだ始まったばかりだという。

*1: Costa Coffee などの大手カフェ・飲料ブランドや,米国や英国などを中心に,紙容器メーカーや,持続可能な包装を推進する業界団体などが名を連ねている。

米国では年間500億個を超える紙カップが使用されているが,その大半は埋め立て廃棄されており,資源回収率は僅か1%未満だ(日本は「燃えるゴミ」として処理)。<br>紙カップの内側には液漏れ防止の目的で,外側には結露防止のためにワックスやPE がコーティングされている。一般の古紙回収システムでは紙とライナー層の分離が難しくリサイクル禁忌品になっていた。更に使用済みカップには飲み残し,吸い殻やガムなどの異物が付着していることも多く,これらがさらにリサイクル工程を複雑にしている。

米国では年間500億個を超える紙カップが使用されているが,その大半は埋め立て廃棄されており,資源回収率は僅か1%未満だ(日本は「燃えるゴミ」として処理)。
紙カップの内側には液漏れ防止の目的で,外側には結露防止のためにワックスやPE がコーティングされている。一般の古紙回収システムでは紙とライナー層の分離が難しくリサイクル禁忌品になっていた。更に使用済みカップには飲み残し,吸い殻やガムなどの異物が付着していることも多く,これらがさらにリサイクル工程を複雑にしている。

「より多くの地域や住民が紙カップをリサイクルするようになるためには,まだやるべきことがたくさんあります。FPI は再生紙の最終市場の開拓と拡大,使用済み紙製品や紙カップの回収と選別能力の強化,地域社会における住民とのコミュニケーションの改善に向けた取り組みを引き続き支援していきます」とFPI 会長のNatha Dempsey(ナサ・デンプシー)氏は会見で語った。

「持続可能なリサイクルプログラムを息長く運営するには,地域社会,製紙工場,回収・再生業者,資源回収施設(MRF),その他のステークホルダーと連携し,持続可能なパートナーシップを構築する必要があります」とFPI のサステナビリティ担当役員のAshley Elzinga(アシュレイ・エルジンガ)氏は語る。「こうしたプログラムは単年度で達成できるものではありません。FPI のアプローチは短期的な目標達成よりも,持続的な市場開発とリサイクルインフラ構築に重点を置いています」。

Paper Cup Alliance に参加するGraphicPackaging International(以下,GPI)も,全米の人口の20%の住民が自治体や民間業者の路上回収サービスを利用できるようになったという節目を歓迎し,紙カップの資源循環に向けた取り組みへの更なる参加を呼びかけ,次のように語る。

「紙カップの回収とリサイクルの向上は,地域社会やリサイクル業者から,ブランドや製造業者などバリューチェーン全体にわたる長年の連携と協力の成果です。当社の[Renewability ]*2プログラムのような取り組みを通じた継続的な消費者教育も大きな役割を果たしています。このイニシアチブは,学校や地域社会が地域でリサイクル活動を活性化することにも役立っています」。

*2: 2026年4月にスタートしたGPIの「持続可能な包装の再生可能性について地域社会を啓発する」取り組み。下線部をクリックして原文にアクセスできます。

GPI は再生紙を利活用して新製品の開発に取り組む大手製紙会社の一社で,2018年に製紙業界トップのInternational Paper(IP)の消費財包装事業を買収,北米最大の紙カップメーカー(北米市場のシェア30%)に躍り出た。昨年10月には,テキサス州Waco に新設された再生板紙工場が稼働を開始,1日最大1,500万個の紙コップ用の再生紙の生産能力を有する。

GPI はWaco 工場の55万トンの再生紙生産ラインをフル活用すべく,CRB (Coated RecycledBoard:塗工再生紙)に加え,UCB *3(Un-CoatedRecycled Board :非塗工再生紙)も併産する態勢を整える。

*3: URB は新聞古紙やミックスペーパーから作られる。表面は粗く,無塗工のグレーまたはブラウン仕上げで,最もコスト効率の良い選択肢で,靴箱,製品仕切り,外面に直接印刷する必要のない折り畳み式ボックスなどに使われる。

リサイクル素材協会(ReMA)は,昨年初めて紙カップをReMA の「材料仕様リスト(再生材の品質ガイドラインを定めた国際規格)」に追加して,再生紙の需要拡大を支援する体制を整えた。

さらに,FPI はWM,Rumpke Waste & Recycling,GFL Environmental,Casella WasteSystems など,使用済み紙カップを受け入れている大手回収・再生業者との連携も強化している。中でもWM は昨年11月,同社が所有するMRF 施設に最新の自動化設備を導入し,紙カップとPP コップの路上回収サービスするための品目リストに追加したと発表した(WM のプレスリリース 2025/11/12 :https://investors.wm.com/news-releases/news-release-details/wm-now-accepts-go-cups-curbside-recycling)。

米国でも着実に紙の包装容器の資源循環が進み始めた。